留学初日、日本舞踊を見せつけたらパリピとダチになった話
初めての環境って、誰でもみんな不安ですよね。
僕は人生で一番の環境の変化を、今年の3月に経験しました。
そう、アメリカ留学です。
英語は読み書きしかできない典型的日本人のアカガメです。留学初日、まともに使える会話表現が "Yeah!" しかありませんでした。Yeahでしかコミュニケーションをとれないなんて、留守番電話メッセージもいいとこです。
英語を話せない日本人が、どうやったら外国人と友達になれるのだろう…
今回は、そんな不安に満ちあふれた留学初日の話です。
スポンサーリンク
はじめての外国人 〜寮〜
僕は、6人1部屋の寮で生活をしています。留学生のステータスがどうたらこうたらで、これまで3回部屋が変わりました。そしてこれは、初代ルームメイトたちについての話になります。
留学初日、なんやかんやはあったのですが無事寮につきました。フロントデスクでチェックインを済ませ、エレベーターで自分の部屋まであがっていきます。エレベーターが上昇するのに比例して、僕の緊張度合いもあがっていきました。
一泊5000円のカプセルホテルを想像させる廊下を通り、部屋のドアを開けると、フーターズのカレンダーが壁に貼ってあるのが目につきました。こんな感じです。
(出典:Hooters Dream Girl Premieres Saturday Featuring 16 Beautiful Hooters Girls Vying for Your Vote)
「おぉ…アメリカっぽいなぁ」
と思いながら目線をそらし部屋の奥をのぞきこんでみると、
(出典:CLIPPERS: GREAT EXPECTATIONS FOR DEANDRE JORDAN)
こんなのがいました。僕は泣きそうになりました。
寮での生活は、他のアジアからきた人と一緒になると思い込んでいました。
前期が語学履修のプログラムだったので、同じプログラムごとにかたまって配置されるのかと思っていたからです。
釜山の清らかな水を飲みすくすくと育ってきた韓国人のチェンくん。
上海のまばゆいネオンに埋もれないように生きてきた中国人の張くん。
彼らとぎこちない英語を交わしあいながら、お互いに切磋琢磨していこう、となると予想していました。
予想は大いに外れました。
予想外のことが起きたので、英語がでてきません。伝家の宝刀“Yeah!”すらでてきませんでした。ハリーポッターがエクスペリアームスを唱えられないのと同義です。
ほかにもぞろぞろ部屋から出てきます。
こんなのや、
(出典:How to eat like an NBA player, according to Portland forward Meyers Leonard | For The Win)
(出典:Most Underrated NBA Players - 2014/2015 Season - Movie TV Tech Geeks News)
こんなの。
「ん、ここはバスケ部の合宿所かな?」とにわかアメリカンジョークをかましたいところでしたがそんな英訳をすることはできず。
3分経って、
“Hi, I’m Ryosuke.”
ようやく言葉がでてきました。大きな一歩です。3分は盛りすぎですが、人間恐怖に陥ると時間を遅く感じるらしいです。僕はハイエナにかこまれたカモシカのように、無防備に体を震わせつづけました。
そして、
“Ok, you are YUGI, nickname!”(今からお前の名前はユウギだ)
湯婆婆よりひどいニックネームがつけられたのはこの時でした。
僕の留学初日は、こうして幕を開けます。
スポンサーリンク
ウォルマートで買い物しながら自分が情けなくなる
バスケ部3人、ゴルフ部1人、ウォーターポロ部1人、そして英語が喋れない日本人1人でこの部屋は構成されているようです。
でもむちゃくちゃいい人たちだったので、初日に車でウォルマートに連れていってもらいました。その道中、僕はこれからどうしていけばいいのか、ずっと考えていました。
みんなイカツイうえに、僕は英語が喋れない。ネイティブスピードがはやすぎて彼らの話を聴きとることさえできません。今まで必死に聴いてきたTOEICの英語。あんなのナマケモノが道路を横断するくらい遅いものなんだと、痛感しました。
話せないなら、違う手をうつしかない。
でもこれといって取り柄のない凡庸なアカガメのことです。甲羅にこもって一旦様子見です。
ウォルマートでは布団カバーから冷凍食品まで、いろいろなものを買いました。ルームメイトたちが僕になにかを勧めてくれるのですが、なにを言っているのかわからない。あげくに彼らはGoogle翻訳でなんとか伝えようとしてくれます。
もう僕は情けなくてしょうがありませんでした。
彼らの親切に応えられない。
ひとのいいアカガメはもう、涙と鼻水が止まりませんでした。
3月に留学したので、花粉症だっただけです。
いきなりのバーデビュー
寮に帰って部屋まわりをととのえると、
“ Would you like to go to a bar? ” (バーいきたいかい?)
と、ルームメイトに言われました。
もちろん、なにを言っているのかはわかりません。すると、ルームメイトがなにかを飲むジェスチャーをしてくれたので、
「あ、これはビールね、ビール飲まされるやつね」
と理解してようやく小声で"Yeah!" を使い、のちに10人くらいでバーに突撃しました。
テーブルに20個くらいお酒が並びました。アメリカのパーティーピープルってこわいなと思いました。
ここでよく考えてみましょう。
英語を話せない、聴きとれない日本人が、どうやって「これ以上飲めない」と言うのだろうかと。
言えるわけがありませんね。僕は勝手に日の丸を背負って、そびえ立つアメリカンたちとひたすら飲みつづけました。僕がお酒を飲み干すたびに、彼らは歓声をあげます。
「こいつらと仲良くなるには、飲みつづけるしかないんだ…」
殻にこもって様子見していたアカガメは、ついに新しいコミュニケーション方法を発見したのです。それは、くだらない親父ギャグだよなあと日本でさんざんバカにしていた言葉。
『ノミニケーション』
でも、確かに効果的だったのです。吐かないようにと自分に言い聞かせながら、なぜか非言語なノミニケーションに精をだしました。
すると、次の瞬間には、ナイトクラブにいました。
ナイトクラブで踊りつづけて友達になった
僕はいたって凡庸な生徒だったので、日本のクラブに行ったことがありませんでした。それなのに、留学初日に、クラブにいるなんて。全身の垢がぬける思いでした。
ヒップホップとか聴かないし、運動神経ないし、ダンスなんてしたことないけど、踊るしかありません。とりあえず、リズムに乗っておきます。なんとなくで、腕もうごかしてみました。
すると彼らは、
"Oh, Japanese dance!" (わぉ。これが日本舞踊か!)
彼らにはそれが異国の舞いにみえたのでしょう。紐ひいたらブルブル震えだすぬいぐるみのようだったと思います。
それでも踊ります。踊りつづけます。
彼らのなかで、
日本=ユウギ ユウギ=パリピ パリピ=日本
の三段論法が成立するまで踊りました。日本代表はこんな重圧を背負っているのかと思いながら、踊って、踊って…
目が覚めた時には部屋でした。
"YUGI, you are crazy."といわれました。
ダチになったのだな、と実感しました。
まとめ
一見、無意味にみえるこの話から何を教訓として得られるのでしょう。
・パリピとの方が仲良くなりやすい。まあそれも教訓でしょう。
・世界はノリでできている。僕はこちらも推しておきます。
確かに、言葉は僕たちをサポートしてくれます。でも本質は、「どれだけ相手と仲良くなろうとするか」です。仲良くなろうと思えば、言葉なんて必要ないです。踊ればなんとかなります。
今でも僕は、前のルームメイトとバーに行きます。いい友人です。それだけに、あの留学初日は、僕にとって忘れちゃいけない1日です。
“Yeah!”のエクスペリアームスさについてはこちら
凡庸なアカガメの紹介はこちら
パリピが大活躍します。